【初めての資産形成 後編】税金軽減制度(保険料控除/住宅ローン控除/ふるさと納税/iDeCo/NISA)の活用

(最終更新日:2024年03月15日)

前回までのおさらい

前編では、資産形成と資産運用の違いを解説した上で、可処分所得の減少や老後2000万円問題など背景から自助努力で資産形成する必要性が高まっていることをお伝えしました。

【初めての資産形成 前編】資産形成はなぜ必要?資産運用との違いは?

 

中編では、月の収入を全て使ってしまい、貯金が全くできないAさんの家計を例に、

・「ゴールを決める、貯める仕組みを作る、増やす」この3ステップで資産形成を行う

・支出を見直し、先取り貯蓄で毎月確実に貯金を積み立て、ある程度手元に預金ができたら余裕資金で金融商品を購入。その際には長期投資、分散投資(商品/銘柄・期間の分散)を行いリスクを小さくしていく

という手順を紹介しました。

【初めての資産形成 中編】家計の見える化と先取り貯蓄で将来に備えよう

今回は資産形成をさらに加速する、節税ができる各種制度をご紹介します。

 

 

税金負担が軽減される5つの制度

上記を実行するだけで確実に資産が貯まっていくのですが、今回は、資産形成を効率的に進め、加速する5つの制度を紹介します。

どの制度も共通するのは「税金が戻ってくる、税金負担が軽減する」と言うことです。

税金が軽減すればその分資産形成することができますよね。

 

ただ、どの制度も申請しないと恩恵を受けることができません。つまり知らなければ恩恵を受けることができないのです。

将来「●●千万の準備をしたい」というような大きな資産形成を目指すのであれば必ず知っておきたい内容となります。

 

 

 

資産形成に活用① 生命保険料控除・地震保険料控除

まず、保険料控除です。この制度は保険料控除対象の保険に加入している場合活用できます。

生命保険料控除と地震保険料控除があります。

 

生命保険料控除

生命保険料控除とは払い込んだ生命保険料に応じて一定の金額がその年の所得から差し引かれ、所得税や住民税の負担が軽減される制度です。

生命保険料控除には保障内容ごとに3つの保険料控除へ分類されています。

 

生命保険料控除 3つの種類

一般生命保険料控除 生存または死亡に起因して一定額の保険金、その他給付金を支払うことを約する部分に係る保険料
介護医療保険料控除 入院・通院等に伴う給付部分に係る保険料
個人年金保険料控除 個人年金保険料税制適格特約の付加された個人年金保険契約等に係る保険料

 

3つの控除を合計した適用限度額は所得税120,000円・住民税70,000円となります。

(出典)国税庁ホームページ

 

生命保険料控除

税金は「課税所得×税率」で計算するのですが、所得が控除(差し引く)され、課税所得が小さくなりますので、その分税金負担も小さくなると言うことです。

実際の税金軽減額については下記の記事で解説しています。

参考:【生命保険料控除】実際の税金軽減額はいくら?所得税、住民税が軽減される3つの制度をFPが解説

 

 

地震保険料控除

地震保険料控除とは、地震保険の契約に伴い保険料を支払うと、1年間(=1月1日~12月31日)に支払った保険料に応じて一定額をその年の所得から差し引くことができ、所得税や住民税の軽減ができる制度です。

地震保険料控除の対象となるのは、居住用の住宅や家財を保険の目的とした地震保険の契約です。
地震保険は単独で加入できず、必ず火災保険とのセット契約となりますが、火災保険料部分は地震保険料控除の対象となりません。

地震保険料控除の控除額

年間控除対象保険料 控除額
所得税 50,000円以下 支払保険料全額
50,000円超 50,000円
住民税 50,000円以下 支払保険料×1/2
50,000円超 25,000円

(出典)国税庁ホームページ

参考:【地震保険料控除】知っていないと損する!地震保険と税金の関係性

 

 

資産形成に活用② 住宅ローン減税(控除)

住宅ローン減税(控除)制度は、住宅ローンを借入れて住宅を取得する場合に、取得者の金利負担の軽減を図るための制度です。

「毎年末の住宅ローン残高 又は 住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額」の1%が10年間に渡り所得税の額から控除されます。

また、所得税からは控除しきれない場合には、住民税からも一部控除されます。
また、消費税率10%が適用される住宅の取得をして、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合には、控除期間が3年間延長されます。

 

この制度は所得控除ではなく、税額控除となります。控除額そのままが税金負担軽減となりますので非常に効果が大きいです。

具体例を見てみましょう。

 

 

新築住宅の場合

消費税率10%が適用される住宅の取得をして、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合の一例を紹介します。

住宅ローン減税(控除) 新築住宅の場合

・当初10年間

「毎年末の住宅ローン残高 又は 住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額」の1% 最大40万円

 

・11〜13年目

以下の①②のうちいずれか少ない方の金額が3年間に渡り所得税の額等から控除されます。

住宅ローン残高又は住宅の取得対価(上限4,000万円)のうちいずれか少ない方の金額の1%

建物の取得価格(上限4,000万円)の2%÷3

 

 

新築(期優良住宅・低炭素住宅)の場合

長期優良住宅・低炭素住宅の場合には減税(控除)額が拡大します。

消費税率10%が適用される住宅の取得をして、2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合で、住宅が一定の要件(長期優良住宅・低炭素住宅)を満たす場合の一例を紹介します。

住宅ローン減税(控除) 新築住宅(長期優良住宅・低炭素住宅)の場合

・当初10年間

「毎年末の住宅ローン残高 又は 住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額」の1% 最大50万円

 

・11〜13年目

以下の①②のうちいずれか少ない方の金額が3年間に渡り所得税の額等から控除されます。

住宅ローン残高又は住宅の取得対価(上限5,000万円)のうちいずれか少ない方の金額の1%

建物の取得価格(上限5,000万円)の2%÷3

 

 

中古住宅の場合

2019年10月1日から2020年12月31日までの間に入居した場合の一例を紹介します。

住宅ローン減税(控除) 中古住宅の場合

・当初10年間

「毎年末の住宅ローン残高 又は 住宅の取得対価のうちいずれか少ない方の金額」の1% 最大20万円

 

数百万単位で税金負担が軽減します。活用できる方は忘れずに活用しましょう。

※対象住宅には条件があります。詳細はすまい給付金サイトをご確認ください。

(参考)すまい給付金サイト http://sumai-kyufu.jp/outline/ju_loan/index.html

 

 

 

資産形成に活用③ ふるさと納税

ふるさと納税とは、生まれた故郷や応援したい自治体に寄付ができる制度です。

手続きをすると、寄付金のうち2,000円を超える部分(から控除限度額まで)については所得税の還付、住民税の控除が受けられます。

ふるさと納税の概要

言い換えると、「控除額までであれば、実質負担2,000円で各種返礼品を受け取れる」制度ということです。

多くの自治体がふるさと納税額の3割程度相当額の返礼品を揃えていますので、返礼品として食料品などを選択すれば、生活費の軽減にもつながります。

 

実質負担2,000円でできる寄付金額上限は、家族構成や給与収入(年収)によって異なります。

ふるさと納税サイトなどでは、シミュレーションができますので、活用してみましょう。

 

 

 

資産形成に活用④ iDeCo(個人型確定拠出年金)

個人型確定拠出年金「iDeCO(イデコ)」とは、将来に備えて自分で作る私的年金の制度のことです。

月額5,000円と少額からはじめられ、節税しながら資産形成できるため、投資経験のある方にも、投資経験がない方でも将来のお金を準備する方法としてお勧めの制度です。

具体的には、あらかじめ用意された定期預金・保険・投資信託といった金融商品で自ら運用し、60歳以降に年金または一時金で受け取ります。

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)のメリット

  1. 毎年の掛け金(自分で支払っている年金額)がすべて「所得控除」の対象で、所得税・住民税が節税できます。
  2. 運用で得た定期預金利息や投資信託運用益が「非課税」になります。
  3. 60歳以降に受け取るとき、「公的年金等控除」「退職所得控除」の対象になります。

 

毎年の掛け金(自分で支払っている年金額)がすべて「所得控除」となる部分にフォーカスしてみてみましょう。

例えば、毎月2.3万円を積み立てた場合、年間の所得控除額は27.6万円となり、掛金全額が所得控除の対象となり、約5.5万円納税額が少なくなります。これは、

・「利回り」と考えると、年間利回り約20%
・30年の節税額合計は節税額合計約165万円

となり、大きなメリットのある制度です。※1

 

iDeCoの活用例

上記の例は、第2号被保険者(会社員・公務員など)で課税所得(※2)195万円超~330万円以下、所得税・住民税合計税率(※3)20%の方が、掛け金額2.3万円/月で加入した場合の例です。

※1税制メリット額=年間掛金×所得税・住民税合計税率(住民税率は所得に関わらず一律10%)1,000円未満で切り捨て表示。なお、2020年4月現在の税制をもとに試算したものです。
※2課税所得の計算例  第2号被保険者(企業の従業員等) 課税所得=給与収入ー社会保険料控除と基礎控除等その他の控除額の合計額
※3上記節税額は復興特別所得税分を反映しておりません。

 

 

iDeCo(個人型確定拠出年金)のデメリット

  1. 60歳になるまで引き出すことは出来ない
  2. 口座の開設・維持に手数料がかかる

 

最大のデメリットは、60歳になるまで引き出すことが出来ないことです。

人生急に大きな出費が必要になることがあります。ですが、iDeCoから引き出すことはできないのです。

あくまで老後生活資金のための制度です。60歳まで手を付けなくて済む範囲での拠出をするようにしましょう。

 

ちなみに、手数料については、iDeCoナビというサイトで各金融機関の手数料を比較できるので便利です。

参考:個人型確定拠出年金「iDeCO(イデコ)」は、節税と資産形成が同時にできる魅力的な資産運用方法

 

 

 

資産形成に活用⑤ NISA(少額投資非課税制度)

通常、株式や投資信託等の金融商品に投資した場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金が掛かります。

NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからない制度です。

但し、想定どおりに運用できなかった場合、資産が目減りしてしまうこともありますので、注意が必要です。

 

なお、2018年1月から、従来の制度に加え、つみたてNISAが始まりますので、その違いを見てみましょう。

 

NISAとつみたてNISAの違い

NISA つみたてNISA
利用できる人 20歳以上(日本国内居住)
新規に投資できる期間 10年間(2014年~2023年) 20年間(2018年~2037年)
非課税となる期間 投資した年から最長5年間

(ロールオーバーを利用して最大10年間)

投資した年から最長20年間
年間投資上限額 120万円 40万円
累計非課税上限額 600万円 800万円
投資対象商品 上場株式(ETF、REIT含む)、投資信託 金融庁が定めた基準を満たすETF、投資信託
投資方法 一括買付、積立 定期かつ継続的な方法による積立のみ
資産の引き出し いつでも引き出せる
損益通算・繰越控除 できない
金融機関の変更 年単位であれば可能

 

 

NISAのデメリット 損益通算ができない

売却益(譲渡益)が非課税になるというメリットがあるNISAですが、デメリットもあります。それは損益通算ができないと言うことです。

通常、特定口座どうしで譲渡益と譲渡損が出た場合、相殺することができます。

 

特定口座どうしであれば損益通算可能

上記の例では、ある特定口座で40万円の譲渡益を出すことができました。

本来ならば、この40万円に約20%の税金がかかるのですが、別の特定口座で40万円の譲渡損が出ているため、譲渡益と相殺されて、課税がなくなります。

これが損益通算です。

 

 

次に特定口座で譲渡益40万円、とNISA口座で譲渡損40万円が出た場合をみてみましょう。

 

特定口座とNISA口座は損益通算できない

 

特定口座とNISA口座は損益通算できないので、実質の損益は±0円にもかかわらず、特定口座の譲渡益40万円に約20%の税金がかかってしまいます。

NISAは「利益がでれば恩恵が大きいが、損失が出た場合には厳しい制度」とも言えます。

 

ただ、前回記事(資産形成の3ステップ 家計の見える化と先取り貯蓄で将来に備えよう)でお伝えしたように、長期、分散投資を行えばリスクを減らすことができます。初心者の場合は個別銘柄ではなく、投資信託の方が良いかもしれません。

そうすれば、リスクを減らしながら利益を出すことができ、NISAで大きな節税効果を得ることができます。

参考:資産形成どうしたらいいの?イデコ、NISA、保険を活用する方法とは?

 

以上、資産形成に役立つ制度(保険料控除/住宅ローン控除/ふるさと納税/iDeCo/NISA)を紹介いたしました。

活用できる方はメリットとデメリットを理解した上でフル活用して資産形成を効率的に進めていきましょう。

 

 

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