なぜ保険料(掛け金)より大きな解約返戻金を受け取れる生命保険があるの?
(最終更新日:2021年09月08日)
目次
支払った保険料より大きな解約返戻金/満期金/年金が受け取れる保険
生命保険の中には、解約返戻金(貯蓄機能)がある保険として、主に下記の種類があります。
・終身保険
・低解約返戻金型終身保険
・外貨建て(主に米ドル建て)終身保険
・学資保険
・養老保険
・個人年金保険
・変額保険
このような保険の中には支払った保険料より大きな解約返戻金/満期金/年金が受け取れる保険があります。
(※ただし、短期での解約については、多くの場合支払った保険料を下回る解約返戻金となります。)
下記は終身保険の一例ですが、一定期間の保険料払込をすると、保険料累計額よりも解約返戻金額の方が大きくなっています。

また、学資保険においても保険料よりも受け取る学資金の方が大きいという商品はよくあります。
学資保険の保険料と学資金のイメージ
保険会社は儲けがないのではないか?
「支払った保険料よりも大きな解約返戻金が受け取れる」そんな保険商品を販売すると「保険会社はやっていけるの?儲けがないのでは?」という疑問を持つ方は多いのではないでしょうか。
支払った保険料よりも大きな解約返戻金が受け取れる生命保険はどの様な仕組みになっているのでしょうか。
保険会社は保険料を基に運用している
保険会社は契約者が払い込んだ保険料を基に資産運用を行っています。
基本的に5年、10年、それ以上の長期の運用を行います。
主な投資先は下記の通りです。
・有価証券 公社債、株式、外国有価証券などで運用しています。
・貸付金 様々な分野の企業を対象とする企業貸付などを行っています。
・不動産 自社の営業用や投資用の国内外の不動産に投資しています。
このように、支払った保険料よりも大きな満期金もしくは解約返戻金を受け取れるのは、保険料を基に保険会社が長期運用をすることによって収益を上げ、契約者への支払いや保険会社の経費や収益を確保しているからなのです。
解約返戻金(貯蓄機能)がある生命保険のデメリット(注意点)
以上を踏まえると、保障を持ちながら、解約した時の解約返戻金が支払保険料累計額を上回るのであれば、いいことずくめではないか、と思われるかもしれません。
しかし、解約返戻金(貯蓄機能)がある保険を活用して、保障の確保だけなく、「お金を貯める/増やす」ことを目的に加入した場合、デメリット(注意点)もあります。
定期タイプの保険で保障を確保するより保険料が高い
同じ死亡保障額で、終身保険と定期保険を比べてみましょう。
<前提条件>
・35歳男性
・A保険会社の死亡保障額1,000万円の死亡保険
・終身保険は 保険期間:終身 保険料払込期間:80歳払済
・定期保険は 保険期間:80歳 保険料払込期間:80歳
<保険料>
終身保険 16,150 円/月
定期保険 4,481 円/月
保険期間が異なるので単純比較はできませんが、終身保険の保険料は定期保険の約3.6倍という結果になりました。
終身保険は保障期間が一生涯で、貯蓄性がある分、掛け捨てである定期保険に比べ保険料が高いことはお分かり頂けたかと思います。
長期間に渡って、資金が自由に使えない状態になる
また、解約返戻金(貯蓄機能)がある保険を活用する場合、「保障を確保しながら貯金」いう感覚かもしれませんが、貯金と保険では「資金を自由に使えるかどうか(流動性)」が全く違います。
<預貯金の場合>
預貯金の流動性は非常に高く、すぐに引き出して現金化することができます。
<生命保険の場合>
生命保険は、すぐに引き出すことはできず、解約手続きをして数日すれば現金化できます。
ただ、解約した時に解約返戻金が払い込んだ保険料総額よりも小さくなり、元本割れとなるケースもあります。
短期の契約の場合には大きく元本割れになる可能性があります。
また、契約者貸付という方法で解約せずに手元にお金を準備することも可能ですが、あくまで貸付なので、元本+金利を返済する必要があります。
<注意したいケース>
ですから、下記のようなケースには注意が必要です。
・独身の時に終身保険に加入
・その後結婚/出産 →保険料支払いが厳しくなる、もしくは現金が必要になる(家購入/教育費)
↓
解約せざるを得ない。途中解約のため元本割れになってしまう。
まとめ
解約返戻金(貯蓄機能)がある保険は保障を確保しつつ、お金を増やすことができますが、長期間に渡ってお金を自由に引き出せない/解約タイミングによっては元本割れの可能性がある、という注意点があります。
このような保険に加入する際には、上記の注意点を踏まえ慎重に検討するとともに、解約しなくて済むように、長期間に渡って手をつけることの無い余裕資金で行うことが重要です。
また、お金を貯める/増やす目的であれば、NISA/iDeCo/投資信託/株式投資などの方法もあります。
資産形成の観点でいうと、複数の商品を組み合わせることでそれぞれの商品の弱点を補いあうことができ、全体的なリスク軽減(分散投資)につながります。