老後に必要な生活費はいくら?どうやって準備するの?

(最終更新日:2019年12月18日)

世帯主の方が定年退職年齢に近づくにつれ、現在の仕事を続けるべきか?新たな仕事を探すべきか?仕事をせずに悠々自適な生活を送るべきか?といったことに頭を悩ませることかと思います。
では、定年退職後を老後と捉えた場合、老後にはどの位の生活費が掛かるのでしょうか?
頭を悩ませている方々に、少しでもお役に立てるよう、ここでは分かりやすく説明したいと思います。

生活費が定年退職を機に大きく変わる

世帯主が定年退職した後の生活は、これまでの生活パターンとは大きく変わり、生活の中心は自宅となります。それに伴う行動範囲やお付き合いする人間関係の変化等により、生活費の内容や支出金額も大きく変わることとなります。

 

定年退職後の支出

減少・不要となる主な支出 変わらない支出 増加・発生する支出
・仕事に関わる支出(服装・交際費等)

・教育費(自立した場合)

・住宅ローン(完済した場合)

・厚生年金保険料、雇用保険料 等

・食費、光熱費、水道費、通信費

・住居費、生保・損保保険料

・介護保険料 等

・医療費

・交際費(友人や近隣住民等)

・国民健康保険料

・後期高齢者医療保険料(75歳~)

 

 

老後の生活費はいくらかかるの?

実際に老後の生活費がどの程度かかっているのかみてみましょう。

 

(1)夫婦世帯の老後生活費の目安

総務省の家計調査報告によると、高齢無職世帯(夫65歳以上、妻60歳以上の夫婦のみの無職世帯)の月々の支出は26万円程度となっています。

一方で、公的年金等の社会保障給付(収入)は月々19万円程度となっていますので、つまり、生活費の月々の不足分は▲7万円程度となっています。

 

夫婦世帯の老後生活費

 

(2)単身世帯の老後生活費の目安

また、同調査によると、高齢単身世帯(60歳以上の無職世帯)の月々の支出は15万円程度となっています。

一方で、公的年金等の社会保障給付(収入)は月々11万円程度となっていますので、つまり、生活費の月々の不足分は▲4万円程度となっています。

 

単身世帯の老後生活費

 

いずれにせよ、支出と収入のバランスから分かるように、老後においては、毎月貯蓄を取り崩して生活していく必要がありますので、あらかじめしっかりと資金の準備をしていくことが大切です。

 

 

老後の生活費用を準備する方法とは?

老後の生活費用につきましては、今後の行動範囲やお付き合いする人間関係によって異なりますが、公的年金だけではカバーできないということは理解いただけたのではないでしょうか。

とはいっても、どのように準備しておけばよいのか分からない方も多いと思いますので、ここでは資産形成に関する様々な方法をご紹介していきます。

 

(1)預貯金

変動金利や固定金利等、各金融機関によって様々な商品が提供されています。一般的にはスーパー定期等の定期預金、毎月一定の金額を預金する積立預金等があります。

 

(2)財形貯蓄

財形貯蓄は、所属する会社が福利厚生の一環として行っており、毎月の給与やボーナスから天引きする形で積み立てる仕組みとなっており、少額からでも積み立てることが可能です。

具体的には、一般財形、住宅財形、年金財形の3種類があり、勤務先の財形制度によって利用できるタイプが異なることもあります。

例えば、財形貯蓄を行うと住宅資金の公的融資を受けられるほか、住宅財形と年金財形であれば合わせて550万円までの非課税制度を利用することができます。

 

(3)DC(確定拠出年金)制度

DC(確定拠出年金)は、毎月掛金を積み立てて運用することで老後資金の蓄えに出来る制度です。毎月の掛金には職業(会社員、公務員、自営業、専業主婦[夫]等)や他の年金制度によって上限はありますが、その範囲内で、どの商品をどれだけの割合で運用するかは自由に決められます。

確定拠出年金には企業型と個人型の2種類があり、企業型は所属する会社が、個人型は加入者本人が掛金を負担します。個人型には、税制上の優遇措置が設けられる等、以下の特徴があり、加入者は年々増加しています。

 

■ iDeCo(イデコ=個人型確定拠出年金)

この制度は、加入者本人が毎月の掛金を積み立てながら運用し、原則的に積み立てた資金を、年金または一時金で60歳以降に受け取る仕組みとなっており、具体的な以下3つのメリットがあります。

 

①税制優遇メリットが受けられる

税制メリットとして、「(ⅰ)毎月の掛金が全額所得控除となり、所得税・住民税が節税となること」「(ⅱ)分配金等の運用益が非課税となること」「(ⅲ)受け取るとき、一定程度非課税(退職所得控除、公的年金等控除)となること」という3つの税制優遇メリットが受けられることです。

 

②毎月の掛金は自由に決められる

毎月の掛金は職業によって上限が決められていますが、その範囲内であれば、生活状況に合わせて自由に決めることができます。

なお、(ⅰ)最低金額の5,000円から上限額まで1,000円単位で毎月の掛金設定が可能、(ⅱ)掛金は途中で変更することも可能ですが、毎年4月から翌年3月の間に1回の変更が可能、(ⅲ)掛金の支払中断や再開も可能(回数制限なし)、といった条件はありますが、自由度の高い点は大きなメリットと言えます。

 

③資産を大きく増やすこともできる

加入者自身が掛金・運用方法を決めることができるので、景気動向や各国の経済状況の伸びを捉えた商品で運用した場合、将来的に受け取るお金を大きく増やすことが可能です。

一方、想定どおりに運用できなかった場合、資産が目減りしてしまうこともありますので、注意が必要です。

 

(4)NISA(少額投資非課税制度)

通常、株式や投資信託等の金融商品に投資した場合、これらを売却して得た利益や受け取った配当に対して約20%の税金が掛かりますが、NISAは、「NISA口座(非課税口座)」内で、毎年一定額の範囲内で購入したこれらの金融商品から得られる利益が非課税になる、つまり、税金がかからない制度です。

但し、想定どおりに運用できなかった場合、資産が目減りしてしまうこともありますので、注意が必要です。

なお、2018年1月から、従来の制度に加え、つみたてNISAが始まりますので、その違いを見てみましょう。

 

NISAとつみたてNISAの違い

NISA つみたてNISA
利用できる人 20歳以上(日本国内居住)
新規に投資できる期間 10年間(2014年~2023年) 20年間(2018年~2037年)
非課税となる期間 投資した年から最長5年間

(ロールオーバーを利用して最大10年間)

投資した年から最長20年間
年間投資上限額 120万円 40万円
累計非課税上限額 600万円 800万円
投資対象商品 上場株式(ETF、REIT含む)、投資信託 金融庁が定めた基準を満たすETF、投資信託
投資方法 一括買付、積立 定期かつ継続的な方法による積立のみ
資産の引き出し いつでも引き出せる
損益通算・繰越控除 できない
金融機関の変更 年単位であれば可能

 

これまで老後資金の資産形成について触れてきましたが、退職金の存在も忘れてはなりません。

所属する会社や勤務年数によって異なりますが、一般的な目安として、中小企業の定年退職時の退職金額が1,400万円程度(東京都産業労働局調べ)、上場企業等の大手企業の場合(大卒)は2,300万円程度(日本経済団体連合会調べ、高卒や短大卒の場合は90%程度)となっています。

 

加えて、定年を迎えた後、毎月かならず出費する光熱費、通信費、食費等の固定的に掛かるコストを見直すことや、まだまだ身体が元気であれば、今までの知識や経験を活かして定年後も働くという選択肢もあります。

慣れ親しんだ職場で再雇用されるという方もいれば、求人サイトへの登録、ハローワークやシルバー人材センターに足を運び求人情報を探すという方法もあります。定年後のシニアの方を優先的に採用している会社も多くなっていますので、老後資金を貯める選択肢の1つとして検討してはいかがでしょうか。

 

生命保険を活用する方法とは?

最後に、老後資金における資産形成の1つの方法として、保険を活用される方が多いことは知っていますか。

保険で準備するメリットとしては、前述したDC(確定拠出年金)やNISA(少額非課税投資制度)と同じように税制優遇が受けられる点にあります。ここでは、老後資金に活用できる主な商品をご紹介いたします。

 

(1)個人年金保険

保障内容は、所定の期間(例えば、60歳や65歳、15年や20年と設定することも可能)まで保険料を支払い、満期になったら年金として受け取ることができます。

受取方法は、一括で受け取る方法、分割で受け取る方法(5年、10年等)、一生涯受け取る方法を選択することができます。

なお、満期前に亡くなった場合は、死亡給付金(支払った保険料相当額)を受け取ることができる商品が大半となっています。

加えて、個人年金保険は、生命保険とは別の税金優遇枠があるので、「死亡保障や医療保障、がん保障が付いている生命保険は加入しているけど、個人年金保険は加入していない」という方は

節税メリットを受けながら、老後資金を準備していく方法があります。

 

(2)外貨建て保険

外貨建て保険は、保険会社が外貨通貨で運用しつつ、保険料の支払い、保険金、年金、解約返戻金等の受け取りを外貨通貨で行う保険です。

一般的には、アメリカドル(米ドル)やオーストラリアドル(豪ドル)で運用されているものが多く、保障内容としては終身保険や個人年金保険等、様々な種類があります。

外貨建て保険については、円建ての保険に比べ、金利が高いため貯蓄性が高い、予定利率が高いため保険料が安い、為替の変動により想定よりも将来受け取る保険金が多くなる可能性がある、といったメリットがある一方、途中で解約する場合に受け取ることができる解約返戻金等については為替変動の状況によっては想定よりも下回る可能性もありますので、資産運用の観点から検討していくことが重要です。

 

まとめ

・老後における月々の生活費目安は、夫婦世帯で26万円程度、単身世帯で15万円程度となる。

・老後の生活費準備は、預貯金、財形貯蓄、iDeCo(個人型確定拠出年金)やNISA(少額投資非課税制度)に加え、個人年金保険や外貨建て保険等を検討する方法がある。

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