【公的介護保険】要支援と要介護の違いと受けられるサービスとは?

(最終更新日:2019年12月18日)

公的介護保険で利用できるサービスは、介護の度合い(要介護度)によって異なります。この介護の度合いを判定するのが、要介護認定(要支援認定を含む)です。要介護認定は、「要支援1~2」と「要介護1~5」の7段階に分かれています。
また、公的介護保険のサービスは「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに大きく分けられます。

介護保険の仕組み

介護保険は、高齢者に介護が必要になったとしても、住み慣れた地域や家庭で自分らしく生活できるよう、また、介護をしている家族の負担が軽減されるよう、国民で保険料を出し合って社会全体で介護を支え合う仕組みとして2000年4月に作られた社会保険制度で、市町村が運営主体となっています(いわゆる公的な介護保険)。

介護保険制度の浸透等に伴い、民間生命保険会社では、上記制度に伴う費用を補うことを目的に介護保険商品を開発・販売している会社が増加しています(いわゆる民間の介護保険)。

ここでは、まず、市町村が運営主体となっている「公的な介護保険」について、説明いたします。

 

介護保険の「保険者」と「被保険者」

介護保険制度を運営する「保険者」は市区町村が担当しており、被保険者(またはその家族)の申請に基づき、要介護認定を行っています。

一方、「被保険者」は、40歳以上の国民全てとなります。介護保険のサービスを利用するためには、要介護認定調査を受け、「要支援1~2」「要介護1~5」と認定される必要があります。

なお、「保険者」である市区町村は、「要支援1~2」「要介護1~5」と認定した被保険者の所得状況に合わせて、サービスを利用した場合における被保険者の自己負担が1割か2割かを決めることができます(一部の高額所得者は2割負担)。

 

介護保険の「被保険者」とは

介護保険の被保険者は、年齢によって次の2つに分けられます。

  • 第1号被保険者(65歳以上の人)

65歳になると介護保険被保険者証が郵送で届きます。原因を問わず、介護が必要であると認定されれば、介護保険を利用することができます。

 

  • 第2号被保険者(40~64歳で医療保険に加入している人)

40歳になると、介護保険料も納めるようになりますが、介護保険の被保険者証は手元に届きません。

なお、特定疾病(老化が原因とされる病気)により介護が必要になったと認められた場合のみ、介護保険を利用することができます(詳細は以下)。

・末期がん、脳血管疾患(脳出血、脳梗塞など)、筋萎縮性側索硬化症(ALS)、パーキンソン病関連疾患、脊椎小脳変性症、多系統萎縮症(シャイ・ドーレガー症候群)、糖尿病性腎症、網膜症、神経障害、閉塞性動脈硬化症、慢性関節リウマチ、後縦靭帯骨化症、脊柱管狭窄症、骨粗鬆症による骨折、早老症(ウェルナー症候群)、初老期における認知症(※1)、慢性閉塞性肺疾患(※2)、両側の膝関節や股関節に著しい変形を伴う変形性関節症

※1…アルツハイマー病、ピック病、脳血管性認知症、クロイツフェルト・ヤコブ病など

※2…肺気腫、慢性気管支炎、気管支喘息、びまん性汎細気管支炎

 

「要介護」と「要支援」の違い

介護保険で利用できるサービスは、介護の度合い(要介護度)によって異なります。この介護の度合いを判定するのが、要介護認定(要支援認定を含む)です。要介護認定は、「要支援1~2」と「要介護1~5」の7段階に分かれています。

具体的に、「要支援1~2」は、予防的に援助が必要、または日常生活を営むのに支障があると見込まれる状態で、「要介護1~5」は常時介護を要すると見込まれる状態をいいます。それぞれ、数字が大きいほど介護の必要性が高くなります。

主治医意見書の内容や審査会での考慮により決定されますが、目安は以下の通りです。

 

要支援1

・居室の掃除や身のまわりの世話の一部に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とすることがある。

・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。

 

要支援2

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。

・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。

 

「要支援1~2」と認定された方は、介護保険の介護予防サービスを利用することができます。但し、介護予防サービスを利用する場合は、介護予防ケアプラン(介護予防サービス計画)の作成が必要となります。

なお、「要支援1~2」の介護予防ケアプランの作成は、地域包括支援センター(介護予防支援事業者)に依頼しましょう。このケアプランに基づいてサービス事業所と契約し、介護予防サービスを利用します。

 

要介護1

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とすることがある。

・排泄や食事はほとんど自分ひとりでできる。

・混乱や理解低下がみられることがある。

 

要介護2

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話の全般に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とする。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作に何らかの支えを必要とする。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作に何らかの支えを必要とする。

・排泄や食事に何らかの介助(見守りや手助け)を必要とすることがある。

・混乱や理解低下がみられることがある。

 

要介護3

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話が自分ひとりでできない。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作が自分ひとりでできない。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分でできないことがある。

・排泄が自分ひとりでできない。

・いくつかの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

 

要介護4

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話がほとんどできない。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作がほとんどできない。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作が自分ひとりではできない。

・排泄がほとんどできない。

・多くの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

 

要介護5

・身だしなみや居室の掃除などの身のまわりの世話ができない。

・立ち上がりや片足での立位保持などの複雑な動作ができない。

・歩行や両足での立位保持などの移動の動作ができない。

・排泄や食事ができない。

・多くの不安行動や全般的な理解の低下がみられることがある。

 

「要介護1~5」に認定された方は、「要支援1~2」と同様、介護保険の介護サービス(在宅・施設)を利用することができます。但し、介護サービスを利用する場合は、ケアプラン(介護サービス計画)の作成が必要です。

なお、「要介護1~5」の介護サービスケアプランの作成は、ケアマネジャー(介護支援専門員)のいる居宅介護支援事業者(ケアプラン作成事業者)へ依頼しましょう。

また、施設サービス[介護保険で利用できる施設(介護老人福祉施設・介護老人保健施設・介護療養型医療施設)]を利用する場合は、その施設のケアマネジャーがケアプラン(施設サービス計画)を作成します。このケアプランに基づいて施設と契約し、介護サービスを利用することになります。

 

要介護認定の有効期間は、新規・変更申請の場合は原則6ヶ月(状態に応じて3~12ヶ月)となっています。また、更新の場合は原則12ヶ月(状態に応じて3~24ヶ月)です。

有効期間内であっても、お身体の状態や家庭環境が変わったときなどには区分の変更申請ができます。

区分変更申請(要支援1~2に認定されている方は要介護認定申請)は、市区町村の窓口で行います。申請から認定までの流れは、要介護認定の申請時と同様です。

介護保険サービスをご利用中で区分変更申請をお考えの方は、担当のケアマネジャーに相談してみましょう。

 

 

「公的な介護保険」のサービス

「在宅サービス」「施設サービス」「地域密着型サービス」の3つに大きく分けられます。

それぞれの概要は、下記の通りです。

なお、各サービスの利用条件や利用料は、「要支援1~2」「要介護1~5」といった要介護度、住んでいる地域、サービス事業所の体制などによって異なりますので、詳しくは地域包括支援センターやサービス事業者に確認してください。

 

在宅サービス

在宅で安心・安全に暮らしていくためのサービスです。主なサービスとして、次のようなものが挙げられます。なお、介護付き有料老人ホームは、この在宅サービスとして提供されています。

訪問介護 ホームヘルパーが利用者宅を訪問して、入浴、排せつ、食事などの介護や、その他の日常生活上の支援・世話を行う。
訪問入浴介護 看護師や介護職員が簡易浴槽を利用者宅に持ち込んで、入浴の介護を行う。
訪問リハビリテーション 理学療法士や作業療法士などが利用者宅を訪問して、リハビリテーションを行う。
訪問看護 看護師が利用者宅を訪問して、療養上の世話や必要な診療の補助などを行う。
居宅療養管理指導 医師・歯科医師・薬剤師などが利用者宅を訪問し、療養上の管理や指導を行う。
通所介護(デイサービス) 通所介護施設(デイサービスセンター)にて、入浴、排せつ、食事などの介護や、その他の日常生活上の支援・世話、機能訓練などを日帰りで行う。
通所リハビリテーション(デイケア) 介護老人保健施設や医療機関などで、理学療法・作業療法などのリハビリテーションや、入浴、食事の提供などを日帰りで行う。
短期入所生活介護/短期入所療養介護(ショートステイ) 介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム)などに短期間入所して、入浴、排せつ、食事などの介護や、日常生活上の支援・世話、機能訓練などを行う。
福祉用具貸与 車いすや電動ベッドなど、日常生活の自立を助けるための福祉用具を貸与する。
特定福祉用具販売 入浴や排せつのための福祉用具の購入費を支給する。
住宅改修費の支給 日常生活の自立を助けたり、介護者の負担を軽くしたりするための住宅改修工事の費用を支給する。
特定施設入居者生活介護(介護付き有料老人ホームなど) 常に介護が必要で在宅生活の困難な方が、日常生活上の世話、機能訓練、看護などのサービスを受けながら生活する。

 

施設サービス

介護保険制度が定める施設に入居し、終日介護を受けるというサービスで、原則として要介護3以上の方が対象となります。主なサービスとして、次のようなものが挙げられます。

介護老人福祉施設(特別養護老人ホーム) 常に介護が必要で在宅生活の困難な方が、日常生活上の世話、機能訓練、看護などのサービスを受けながら生活する施設
介護老人保健施設(老健) 病状が安定している方が在宅復帰できるように、リハビリテーションを中心とした介護が行われる施設。原則として入所期間は3カ月とされています
介護療養型医療施設(療養病床など) 急性期の治療を終え、長期の療養を必要とする方のための医療施設。

 

地域密着型サービス

住み慣れた地域で暮らし続けるのをサポートするためのサービスで、原則として住んでいる市区町村で提供されているもの以外は利用できません。主なサービスとして、次のようなものが挙げられます。

認知症対応型通所介護 認知症高齢者を対象に、デイサービスセンターなどにおいて日常生活上の世話や機能訓練を行う
小規模多機能型居宅介護 利用者の心身の状態や家族の事情が変わっても、住み慣れた地域で介護が受けられるよう、一つの拠点で通所介護(デイサービス)を中心に、訪問介護、ショートステイを組み合わせて提供する
看護小規模多機能型居宅介護 小規模多機能型居宅介護に訪問看護を組み合わせて、複数のサービスを一つの事業所が一体的に提供する
認知症対応型共同生活介護(グループホーム) 認知症の高齢者が5〜9人以下で共同生活をする住居で、入浴、排せつ、食事などの介護や、その他の日常生活上の支援・世話、機能訓練を行う
定期巡回・随時対応型訪問介護看護 1日複数回の定期訪問によって、入浴、排せつ、食事などの介護や、その他の日常生活上の支援・世話を行う。また、24時間365日対応可能な窓口が設けられ、電話などで連絡することにより、随時訪問介護・訪問看護サービスを提供する

 

 

まとめ

これまで「公的な介護保険」の概要について説明してきました。詳細は、運営主体であるお住まいの市区町村にお問い合わせください。

一方、「要支援」「要介護」の状態となった場合、予期せぬ費用が発生するケースが散見されます。

「公的な介護保険」の状態に連動した「民間の介護保険」もあります。人生100年時代と言われる中、年を重ねると「要介護」の状態になるリスクも高まります。最寄りの保険ショップ等では、無料で様々な生命保険会社と比較することもできますので、「民間の介護保険」を検討してみることも良いかもしれません。

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