先進医療は公的健康保険の適用外?医療保険やがん保険でカバーできる?

(最終更新日:2021年03月05日)

がんの治療法として耳にすることのある「陽子線治療」や「重粒子線治療」などの先進医療は健康保険が適用されるのでしょうか。

先進医療とは

先進医療とは、新しい医療技術、患者ニーズに対応することを目的に、厚生労働大臣所定の基準に合致した医療機関で行われる高度な医療技術等をいい、「重粒子線治療」や「陽子線治療」など、80種類の医療技術が提供されています。(令和2年7月1日現在)

 

先進医療は時代とともに変化する

先進医療の種類は随時見直しが行われます。

保険診療への導入されることが決まり、先進医療でなくなる技術や、さまざまな要因により保険診療への導入には適さないと評価された場合は、承認取消され、先進医療から削除されます。

もちろん、新たに承認追加される技術もあります。

 

主な先進医療の種類と費用

平均費用が上位の主な先進医療の一覧です。

主な先進医療一覧

先進医療技術名 適応症 年間実施件数 平均費用
重粒子線治療 限局性固形がん 1,639 3,086,917円
陽子線治療 限局性固形がん 2,916 2,635,433円
自己腫瘍・組織を用いた活性化自己リンパ球移入療法 がん性の胸水若しくは腹水又は進行がん 12 1,760,741円
樹状細胞及び腫瘍抗原ペプチドを用いたがんワクチン療法 腫瘍抗原を発現する消化管悪性腫瘍(食道がん、胃がん又は大腸がんに限る。)、原発性若しくは転移性肝がん、膵臓がん、胆道がん、進行再発乳がん又は肺がん 96 1,049,323円
凍結保存同種組織を用いた外科治療 心臓弁又は血管を移植する手術を行うもの 27 789,765円
自家嗅粘膜移植による脊髄再生治療 脊髄損傷(損傷後六月を経過してもなお下肢が完全な運動麻痺を呈するものに限る) 4 752,300円
多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術 白内障 7,026 509,863円
経頸静脈肝内門脈大循環短絡術 内視鏡的治療若しくは薬物治療に抵抗性を有する食道静脈瘤若しくは胃静脈瘤、門脈圧亢進症性胃腸症、難治性腹水又は難治性肝性胸水 19 474,764円
自己腫瘍・組織及び樹状細胞を用いた活性化自己リンパ球移入療法 がん性の胸水若しくは腹水又は進行がん 144 409,085円
泌尿生殖器腫瘍後腹膜リンパ節転移に対する腹腔鏡下リンパ節郭清術 泌尿生殖器腫瘍(リンパ節転移の場合及び画像によりリンパ節転移が疑われる場合に限る) 14 395,200円

(出典)厚生労働省「先進医療の各技術の概要(平成27年7月1日現在)」

(出典)厚生労働省「先進医療会議 平成26年6月30日時点における先進医療の実績報告について」

 

平均費用ではがん治療に用いられる重粒子線治療、陽子線治療が200万円を超え、非常に高額となることがわかります。

一方、件数では重粒子線治療、陽子線治療、多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術といった先進医療が多く実施されています。

次に実施件数の多い先進医療について、詳しくみていきましょう。

 

 

 

実施件数の多い先進医療① 重粒子線治療

重粒子線治療は先進医療のひとつで、放射線の一種である重粒子線をがん細胞に照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。

 

重粒子線治療の特徴

・がん細胞にピンポイントで放射線を照射できる

・がん細胞周辺の正常組織へのダメージを軽減できる

・副作用が軽くすみ、体への負担が少ない

 

重粒子線は設定した深さに到達した時に最も強い放射線を放出して、停止するという特性がありますので、がん細胞にピンポイントで放射線を照射できます。そのため、少ない回数でがん細胞を死滅させることができ、正常組織へのダメージも軽減できます。また余分な放射線を浴びない為、副作用も軽くすむことが特徴です。

 

重粒子線治療を実施している医療機関がある都道府県

重粒子線治療を実施している医療機関がある都道府県は下記の通りです。(2017年4月1日現在)

・群馬県

・千葉県

・神奈川県

・兵庫県

・佐賀県

(出典)厚生労働省ホームページ

 

 

 

実施件数の多い先進医療② 陽子線治療

陽子線治療は先進医療のひとつで、放射線の一種である陽子線をがん細胞に照射して、がん細胞を死滅させる治療法です。

 

陽子線治療の特徴

・がん細胞にピンポイントで放射線を照射できる

・がん細胞周辺の正常組織へのダメージを軽減できる

・副作用が軽くすみ、体への負担が少ない

 

陽子線は設定した深さに到達した時に最も強い放射線を放出して、停止するという特性がありますので、がん細胞にピンポイントで放射線を照射できます。そのため、少ない回数でがん細胞を死滅させることができ、正常組織へのダメージも軽減できます。また余分な放射線を浴びない為、副作用も軽くすむことが特徴です。

 

陽子線治療を実施している医療機関がある都道府県

陽子線治療を実施している医療機関がある都道府県は下記の通りです。(2017年4月1日現在)

・北海道

・福島県

・茨城県

・千葉県

・福井県

・長野県

・静岡県

・愛知県

・兵庫県

・岡山県

・鹿児島県

(出典)厚生労働省ホームページ

 

 

 

実施件数の多い先進医療③ 多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は白内障の治療法のひとつで、先進医療のひとつです。

白内障は目の中にある水晶体(カメラでいうレンズの働きをする部分)が白くにごるため視界がかすんだり、ぼやけたりする病気です。

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術は、にごった水晶体の代わりに多焦点眼内レンズを埋め込みます。

 

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術の特徴

健康保険適用の「単焦点レンズ」を用いた治療もありますが、「単焦点レンズ」はピントが合う距離がひとつなので「遠くか近く」のどちらかしかピントが合いません。かすみやぼやけを解消できるものの、治療後にメガネなどでの視力の補正を必要する場合があります。

 

一方、多焦点眼内レンズは複数の距離にピントが合うレンズなので、治療後裸眼で生活できる程度の視力を取り戻すことが期待できます。

手術時間は10分から15分程度でほとんどの場合日帰り手術が可能です。

 

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を実施している医療機関がある都道府県

多焦点眼内レンズを用いた水晶体再建術を実施している医療機関は島根県以外の全都道府県にあります。(2017年4月1日現在)

(出典)厚生労働省ホームページ

 

 

 

先進医療にかかる費用は公的健康保険適用外

先進医療は、将来的に健康保険等の適用が検討されている技術であり、現時点では「健康保険が適用されない治療」ということになります。

つまり、先進医療にかかる費用は全額自己負担になってしまいます。

ただし、通常の治療と共通する部分(診察・検査・投薬・入院料など)の費用は一般の保険診療と同様に健康保険が適用されます。

 

先進医療の場合(健康保険が適用される治療・先進医療)

 

先進医療の費用が公的健康保険を適用されない理由

日々進歩していている医療技術には、研究段階から医療現場で使用できるレベルまで段階があります。

その中で、現場で使える段階にあるものの、ごく一部の限られた医療機関でしかできない医療技術が先進医療にあたります。

例えば、ある先進医療が全国でも東京の一病院でしかできないのに、もし保険扱いにしたら遠方の人には不公平となってしまいます。

こういった医療の公平性の観点から、先進医療の技術料は健康保険適用対象になっていないのです。

 

 

 

がん保険や医療保険の先進医療特約で先進医療に備える

健康保険適用外で高額になる先進医療の費用に備えるため、がん保険や医療保険には先進医療特約を付加することができます。

今発売されている医療保険にはほどんど付加できます。

保険料は、月々100円程度となっています。

保障期間通算で1000万円や2000万円のような保障額の上限が設定されており、その範囲内であれば、先進医療を受けた場合の技術料の実費負担全額を保障する、というものが一般的です。

先進医療特約とは?<医療保険・がん保険の特約>

まとめると

・先進医療にかかる費用は健康保険が適用されないため全額自己負担となります。
・健康保険適用外の先進医療の費用に備えるため、がん保険や医療保険には先進医療特約を付加することができます。

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